温室効果ガス:「既存法での規制不要」 米EPAが報告書、対策先送り
- 2008/07/12(土) 00:00:00
【ワシントン草野和彦】米環境保護局(EPA)は11日、温室効果ガス排出を既存の法で規制する必要はない、との報告書をまとめた。規制を強く促した昨年の連邦最高裁判決を受け、関係部局と協議をしてきたが、米国内の温暖化対策は新政権にゆだねられることになった。9日まで開催された北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の首脳宣言でも新たな数値目標はなく、温暖化対策に関してブッシュ政権は「時間を浪費した」(米紙)との評価が固まりつつある。
昨年4月の判決で最高裁は、EPAは大気浄化法に基づき、温室効果ガスの規制権限があると認定。規制をしないならば、温室効果ガスが健康に悪影響がないことを証明するよう求めていたが、報告書には危険性は盛り込まれなかった。
ワシントン・ポスト紙によると、草案には「法規制が必要」との内容もあったがホワイトハウスなどの要求で変更。排出削減に伴う公益を示す数値も極端に小さくされたという。
温暖化の影響を矮小(わいしょう)化しようとする動きは、これまでも指摘されてきた。今月8日には、チェイニー副大統領のスタッフから専門家の議会証言内容の変更を求められたという、元EPA職員の告発も明らかになった。
下院エネルギー自立地球温暖化問題特別調査委員会のマーキー委員長(民主)は同紙に「ブッシュ政権が、報告書に干渉するぐらいの労力を温暖化対策に向けていたら、地球はこんなにひどい状況になっていなかったかもしれない」とコメントした。
毎日新聞 2008年7月12日 東京夕刊
北海道洞爺湖サミット:「数値目標なし」、各国紙「辛口」論評−−温暖化対策合意
- 2008/07/12(土) 00:00:00
◇福田首相「指導力不足」指摘も/米紙「大統領の変化は花道」
9日閉幕した北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)は、2050年までの温室効果ガス半減の長期目標を各国が共有することで合意した。だが数値目標のない内容には、各国メディアの「辛口」の論評が目立った。
◆米国
9日付ニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙は、ブッシュ大統領の「SHIFT(変化)」との見出しを掲げた。温室効果ガス削減の長期目標に対し、米国が関与を初めて示したためだ。ポストは大統領の「変化」の理由を、気候変動の科学的な証拠や同盟国、議会多数派の民主党からの圧力と分析。政府高官らが、任期が残り少ない大統領の花道作りに腐心した結果と見ている。【ワシントン草野和彦】
◆ロシア
各紙は「この数年で最も退屈なサミットだった」(コメルサント)などと酷評。理由については福田康夫首相の指導力不足を挙げる論評が目立った。ブレーミャ・ノボスチェイ紙は「温暖化問題は、食糧危機問題などのため2次的となってしまった」と断じた。【モスクワ杉尾直哉】
◆ドイツ
独紙の多くは、温室効果ガス削減の長期目標に基準年が明記されていない問題などを詳細に報道。温暖化対策のため、政府が決定済みの脱原発を数年先延ばしすべきだとの問題提起も目立った。【ベルリン小谷守彦】
◆ペルシャ湾岸諸国
カタールのガルフ・タイムズ紙は「洞爺湖のビジョンは、幻影にすぎない」と指摘。アラブ首長国連邦のガルフ・ニュース紙も「指導者が、問題を先送りしていることは明らか」と批判した。【ベイルート高橋宗男】
◆インド
インド各紙は、温室効果ガス削減が経済成長を妨げかねないと懸念する論調が目立った。ザ・ヒンドゥ紙は、シン首相が討議の場で「我々は(温室効果ガス排出量の)量的規制を当面考慮できない」と述べたが宣言文に盛り込まれず、インドには不本意な合意だったと報じた。【ニューデリー栗田慎一】
毎日新聞 2008年7月12日 東京朝刊
きょう開幕 温暖化防止、具体的進展目指す
- 2008/07/07(月) 22:04:09
北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)は7日、洞爺湖町のホテルで開幕する。▽地球温暖化▽原油・食糧高騰など世界経済▽北朝鮮、イランの核など政治問題▽開発、アフリカ−−などについて9日まで議論する。温暖化対策では、温室効果ガス削減で2050年までの長期目標をどこまで具体化し、13年以降のポスト京都議定書の枠組み作りに道筋をつけられるかが問われる。9日発表される議長総括では、北朝鮮の核、拉致問題の早期解決を求める。
昨年の独ハイリゲンダム・サミットでは、温暖化対策について世界の排出量を50年に半減する長期目標を「真剣に検討する」との合意にとどまった。今回は、主要8カ国(G8)の共通認識をどこまで前進させられるかが注目される。
これに対し、最終日9日に開かれる米国主導の主要経済国会合(MEM)では、中期目標について米国を含む先進国が国別総量目標を掲げることで一致する方向だ。そのためG8の長期目標では、中国、インドなど新興国の反対姿勢を理由に慎重姿勢を崩さない米国の対応が焦点になる。米国の譲歩を引き出すため、「発展途上国にも実現を働きかける」との表現を盛り込むことも検討されている。
日本でのサミットは00年の九州・沖縄サミット以来5回目。今回はG8のほか、招待国として中国、インド、ブラジルなどの新興国、アフリカ7カ国の首脳など過去最多の計22カ国が参加する。
会議は7日昼にアフリカ問題を討議する拡大会合で幕を開け、8日はG8だけで討議。9日は中国など新興国を加えて温暖化や食糧問題について話し合う。【須藤孝、平地修、高山祐】
毎日新聞 2008年7月7日 東京朝刊
北海道洞爺湖サミット:温室ガスの半減、合意必要性強調−−EU委員長
- 2008/07/07(月) 22:03:39
欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員会委員長はサミット開幕を前に7日午前、北海道洞爺湖町で記者会見した。2050年までに世界の温室効果ガス排出量を半減させるとの長期目標について「(昨年のハイリゲンダム・サミットで合意した)『真剣に検討する』はもはや不十分だ」と述べ、拘束力のある削減目標に主要8カ国(G8)が合意する必要性を改めて強調した。さらに長期目標をより信頼性のあるものにするため、野心的な中期目標の設定も求めた。
また、食糧危機を受けてEUが実施している途上国への食糧支援について、10億ユーロ(約1670億円)を追加することを明らかにした。これで支援総額は18億ユーロになるという。【足立旬子】
毎日新聞 2008年7月7日 東京夕刊
エコナビ2008:インフレ無策、G8限界露呈 新興国の大量消費、止められず
- 2008/06/15(日) 00:00:00
<ECONOMIC NAVIGATOR>
14日閉幕した主要8カ国(G8)財務相会合の共同声明は世界的なインフレ圧力に協調して対応する姿勢をアピールした。しかし、インフレ圧力の原因である原油・食糧価格高騰の根底には、中国やブラジルなど新興国のエネルギー大量消費がある。G8は中国やブラジルとの拡大会合で、本格的なエネルギー節減を促したが、成果は乏しかった。声明に盛り込んだ産油国への増産要請も、G8メンバーの産油国ロシアでさえ及び腰。新興国や産油国に対し、影響力を発揮できなかった大阪会合は「世界経済を回し切れないG8の限界」(国際金融筋)を浮かび上がらせた。【清水憲司】
「世界経済はファイナンス(金融)、フード(食糧)、フュエル(燃料)の三つの『F』に席巻されている」−−。ラガルド仏経済・財務・雇用相は14日の会合で、米サブプライム問題による金融市場の混乱も収まらないうちに、インフレ圧力増大に苦しめられる現状を「3F危機」と表現した。特に、わずか1年半で3倍に跳ね上がった原油(燃料)高は、世界的なインフレの大波を起こし、インドや中国、ブラジルなどの新興国の金融引き締めにつながっている。金利上昇が新興国経済の失速を招けば、中国、ブラジルなどへの輸出に頼る傾向を強めている日本や米国経済も一気に後退局面入りしかねない。このため、G8財務相会合は、原油高抑制に向けた新興国との連携に躍起となった。
新興国に根強い原油先物市場での投機取引批判に配慮し、国際通貨基金(IMF)に原油高と投機マネーとの関連を調査させることで一致。さらに、省エネ技術の導入支援などで、経済成長を犠牲にせずに新興国のエネルギー消費が大幅に抑制されるとの青写真も描いた。
しかし、「省エネを言うなら、先進国の努力が先」(ゼーリック世界銀行総裁)との思いが強い新興国からの理解は十分には得られなかった。G8は、原油高への有効打を放てないまま、7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)を迎えることになる。
◇手詰まりサブプライム
米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で多額の損失を出した欧米金融機関の経営問題が解決せず「市場の再混乱への警戒が緩められない」(額賀福志郎財務相)ことも、G8の政策手詰まり感を増幅している。
米金融機関はサブプライムローンに直接関連する損失こそ処理したものの、不動産下落が止まらないため優良担保の証券化商品の含み損を拡大させている。中央銀行の大量の資金供給で「小康状態を保っている」(財務省幹部)状態で、新たな金融危機への懸念は市場でくすぶったまま。
リーマン・ブラザーズが6月に格下げされ、経営者更迭や新たな資本増強を迫られたことも不安を広げており、欧米中央銀行は多額の資金供給を止められず、インフレ圧力を自ら高めてしまうジレンマに直面している。
◇「環境」でも新興国警戒
G8財務相会合は、地球温暖化対策の目玉として、日米英が提案した「気候投資基金」の早期創設を前面に打ち出した。
日米英が意気込む背景には、基金をテコに、温室効果ガス排出削減の国際的な枠組みに中国やインドなどの新興国を引き込みたいとの思惑がある。
特に、ポールソン米財務長官は「基金の規模を100億ドル(約1兆1000億円)に拡大したい」と、新興国支援の姿勢を強調してみせた。
しかし、「支援と引き換えに温室効果ガスの削減義務を課せられるのでは」と懸念する新興国側は、水面下の交渉で「(削減状況を)厳しく監視しない」など、さまざまな注文を日米英に突きつけてきた。
「100億ドル基金」といえども、温室効果ガス削減の枠組みに新興国を引き込むのは簡単ではなさそうだ。
◇米財務長官「強いドルを維持」
ポールソン米財務長官は、14日の主要8カ国(G8)財務相会合後の会見で、「米経済の潜在力は強固で、必ずや通貨にも反映する」と述べたうえで「ドル高は米国の国益だ」と、ドル安阻止に強い姿勢を改めて示した。
ドル安が原油市場に投機資金を流れ込ませ、原油高騰を招いているとの見方に対しては「原油はすべての通貨に対して高騰している。ドルとは関係ない」と否定した。
一方、フランスのラガルド財務相は、ポールソン長官が本会合で「強いドル」に言及したことを明かしたうえで、「私は満足している」と述べ、ドル相場安定の必要性に理解を示した。
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■G8財務相会合共同声明(骨子)
・世界経済は逆風に直面
・原油・食糧価格上昇は世界の安定成長の重大な試練で、インフレ圧力を高める恐れ
・石油市場の透明性向上のため、流入する資金規模などのデータを整備
・国際通貨基金(IMF)などに原油高騰の背景分析と報告を要請
・バイオ燃料は非食糧からの生産方法の開発が優先課題
・日米英が提案した途上国の温室効果ガス削減を支援する「気候投資基金」の設立を支持
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■ことば
◇気候投資基金
途上国の温室効果ガス削減支援のため、日米英が提案している。世界銀行に設置し、日本は最大12億ドル(約1300億円)、米国が20億ドル(約2100億円)、英国が8億ポンド(約1700億円)の拠出を表明。中国やブラジルなど新興国向けに電力・運輸部門の省エネ設備導入を促す「クリーン・テクノロジー・ファンド」と、アフリカなど貧困国の森林保全などを支援する「戦略気候ファンド」の二つで構成する。
毎日新聞 2008年6月15日 東京朝刊


